大変!外出先でシミをつけてしまった!
シミ抜きは、どんなに信用できる市販のシミ抜きを用いても、素人には無理だ。シミをつけてしまったら、そのままの状態で信頼できるクリーニング屋に持ち込み、シミの種類を申告する。それがもっとも安全な方法である。
落合正勝 [新版]『男の服装術』
前回のコラムの最後に引用したこの一文は、誰もがこれまでに耳にしたことがある内容で、しかも、自分でシミ抜きをして実際に失敗した経験もあるのではないでしょうか?それにもかかわらず、自分でシミ抜きをしてしまうケースとして、今回は外出先でシミをつけてしまった場合を考えてみます。
周囲の目がある外出時ですが、着替えを余分に持ち歩いているわけではありません。シミをつけてしまったり、シミに気が付いたりすると、そのままでやり過ごすことは、難しいものです。また、『シミ抜きは、早ければ早いほど落ちやすい』や『時間が経過したシミは取れにくい』という一般認識も、その場でシミ抜きを試みようと思わせる一因です。
外出先でのシミの応急処置法として紹介されている典型的な例は、
1. 汚れた部分の食べ物などの固形物を、乾いたティッシュなどでつまみとる
2. 水分を含ませたティッシュなどでシミをつまみとる
3. シミが落ちにくい場合は、石鹸を少量なじませる
4. 石鹸分が残らなくなるまで水分を含ませたティッシュなどで押さえる
5. 乾いたティッシュで押さえて水分を取り除く
というものです。
しかし、このよく目にする応急処置法は、家庭で洗える衣類に限られ、水や石鹸で落ちやすいタイプのシミについての記載であると認識を改めたほうが無難です。この場合の水や石鹸で落としやすいタイプのシミとしては、醤油、ソース、ケチャップ、ジュース、酒類、味噌汁、ラーメンの汁、コーヒー、カレー、血液、汗などがあげられます。
シミには、ベンジンやアルコールなどの有機溶剤で落としやすいタイプもあります。バター、生クリーム、食用油、ファンデーション、口紅、ボールペン、朱肉、油性インクなどには、水を使った上記の応急処置は間違った対処法となるのです。
それでは、家庭で洗わない外出着についてはどうでしょうか?結論から言うと、自分でシミ抜きを行うことは絶対にお勧めしません。ここで改めてデメリットやリスクを整理しておくと、
① シミが広がり、輪ジミになる
② 繊維の奥に入り込んでしまい、かえって取れにくくなる
③ 油分や色素など、水と石鹸だけでは落としにくいシミは多い
④ 濡れた状態での摩擦は、毛羽立ちなどの風合い変化や、色抜けを引き起こす
⑤ 繊維の種類によっては、アルカリ性の石鹸で、風合い変化や変色を引き起こす
などです。
家庭で洗わない外出着のシミ抜きには注意点が非常に多く、十分な道具や薬剤が無い状況で、あわてて自分でシミ抜きをすることは無謀とも言えます。たとえ半日、丸1日、シミ抜きが遅れたとしても、その場ではシミを広げないように乾いたハンカチやティッシュで軽く押さえる程度にとどめてください。
繰り返しになりますが、家庭で洗わない外出着にシミをつけてしまった場合は、シミ抜き専用機械、薬剤、経験と技術のある当社にご相談ください。小さなシミでしたら、全体をクリーニングするのではなく、部分的なシミ抜きだけでも承ります。
次回は、家庭で洗濯しても取れないシミや、洗濯で色移りしてしまった場合について考えてみます。