スーツの最も効果的なお手入れとは?
スーツのお手入れにおいて最も大事なことは何かご存知でしょうか。
まずはこの1文をご紹介します。
スーツの最も効果的な手入れは、ただ一つ、ブラッシングを終始くまなく試みることである。シーズンごとにクリーニングに出すのはばかげている。それよりも着用後必ずブラッシングをして、ホコリを落とす習慣をつける。
落合正勝 [新版]『男の服装術』
ブラシ掛けは、表面に付着した汚れを払い落とすだけでなく、着用のあいだに乱れた繊維の流れを整えて艶を出し、繊維に空気を通すことで生地をふっくらとした風合いに戻すことができます。そのため、クリーニング店でもウールやカシミアなどの獣毛繊維のお品には、仕上げ工程の最後にブラシ掛けを行います。
ブラシ掛けには、静電気が起きにくい天然毛の素材のブラシで、コートにはあたりの柔らかい馬毛のものを、スーツやジャケットでしっかりした生地の場合には、張りのある豚毛のものを使用します。
ブラッシングするときは、服をしっかりとした作りのハンガーに掛けて、最初に繊維の流れに逆らうように軽くブラッシングして、ホコリや汚れを浮かせます。次に繊維の流れに沿ってブラシを掛け、表面の汚れを払い落とします。このときブラシの持ち手は軽く握り、手首のスナップをきかせてホコリを軽く払い飛ばすようにします。ブラシを服に押しつけてこするように使うと、生地が摩擦で傷むだけでなく、ホコリや汚れが繊維の奥に入り込んで取れにくくなるので厳禁です。
ご着用の状態によりますが、ウールやカシミアなどの獣毛繊維のスーツやコートについては、お手入れはブラシ掛けで十分な場合があるのは本当です。ウールはその優れた弾力性により、シワになりにくく、シワになってもすぐ元に戻ります。よほど深くシワが付いた場合以外には、スチームアイロンで仕上げる必要もないでしょう。
着用回数が少なく、シーズン終わりに洗うかどうか迷うようなコートについては、ホコリ、スス、花粉などの繊維の表面に付着しているであろうわずかな汚れを落とせば良いのです。必ずしもクリーニングで繊維の奥まで溶剤を浸透させて、全体を洗う必要はありません。
ところで、冒頭に引用した文章には、実は続きがあり、著者は最後に下記のように締めくくります。
シミ抜きは、どんなに信用できる市販のシミ抜きを用いても、素人には無理だ。シミをつけてしまったら、そのままの状態で信頼できるクリーニング屋に持ち込み、シミの種類を申告する。それがもっとも安全な方法である。
落合正勝 [新版]『男の服装術』
「シミ抜き」は白洗舎にお任せください。
このコラム、次回はシミ抜きについてお話してみようと思います。